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遺言~こんな時ってどうなるの?

「相続トラブルを避けるためにも遺言を書きましょう」

「あなたの財産のことはあなたが決めましょう」

遺言作成をすすめるにあたってよくある「謳い文句(?)」です。
実際にここ数年間で多くの方が遺言作成されており、「遺言のことなら、もう作ったから大丈夫」と、この記事をご覧になっている方もいらっしゃるかと思います。遺言の必要性については、いろんな本が出ていますし、インターネットで検索すればたくさんヒットしますし、テレビなどでも特集を組まれていることが多いので詳細は省略させていただくとして・・・(ちなみに当事務所でも過去に無料小冊子を作りました。まだ在庫がありますので、ご希望の方があればお送りいたします)。

「遺言した後で、私より先に譲るべき相手が死んだらどうなるの?」
時々こんな質問をされることがあります。
「あ、そういえば。。。さて、どうなるのかな?」
と思われる方も多いと思います。

例えばこんなご家庭があったとしましょう。

  • ①Aさん(72歳、女性)名義の自宅に長男夫婦(子供無し)と同居している。
  • ②ご自宅不動産は、8年前にAさんの夫が死亡した際にAさん名義に変更している。
  • ③Aさんにはご自宅不動産以外に特に資産無し。
  • ④Aさん夫婦にはあと2人の子(二男、長女)がいる。
    ( 二男と長女に対しては、夫の生前にそれぞれ家を建てる際に相当の資金を出している)
  • ⑤Aさんの子供たちの仲が悪い。

ある日、テレビで遺言の特集をやっていたのをたまたま見ていたAさんは、遺言の必要性に気づき、近くの司法書士事務所へ行き、このような想いを語りました。

「私には自宅の土地建物以外に財産と呼べるものはありません。
もちろん自宅についてはずっと同居してくれている長男に譲りたいと考えていますが、恥ずかしながら兄弟同士の仲があまりよくないので、私が死んだ際に家の名義のことでモメるかもしれません。子供たちにとってはそれぞれが育ってきた実家ですが、今では長男と結婚してからずっと同居して、家のことも良くしてくれている嫁の住まいでもあります。この子達が安心して住み続けることが出来るように長男に譲る旨の遺言を書いておこうかと思うのですが・・・」

さて、このような場合にはどんな内容の遺言を書けば良いのでしょうか?
Aさんは「自宅不動産を長男名義に」と言っているので、当然ながら

-自宅不動産については長男に相続させる-

という内容の遺言をすることになります。Aさんにとっては、少なくとも自宅の名義については「これで安心」ということになりそうですが、実はこの内容の遺言ではとっても重大な危険が隠れているのです。

もし、Aさんが亡くなる前に長男が亡くなってしまったら・・・

あってはならないことですが、子が親より長生きするとは限りません。遺言で自宅名義を譲ることになっていた長男がAさんよりも先に亡くなってしまった場合、したためていた遺言は長男に譲る部分について無効となってしまうのです。「え?長男の相続人に権利が移るんじゃないの?」と思われがちですが、違うのです。

遺言が無効になると、遺言をしなかったことと同じことになりますので、当然ながら仲の悪い兄弟2人だけに自宅不動産を相続できる権利が残ります。しかも、不幸なことに自宅不動産の名義はあくまでもAさんですので、Aさんの相続人ではない
長男の妻には自宅不動産を相続できる権利が一切ありません。長男に子供がいない以上、自宅名義の行方はAさんの相続人である二男と長女に全て委ねられることとなってしまいます。

二男と長女がかねてより仲が悪かった兄弟の嫁のために自宅不動産を譲ってくれる可能性はどのくらいのものでしょうか?たとえ不動産を譲るとしても、代わりに相当な金額を請求されるのが現実ではないでしょうか?金額の折り合いがつかない場合には、結婚以来数十年間義理の両親と共に家を守り、誰よりも義理の両親の老後の面倒も見てきた長男の妻が何ら法的に口出しする権利なく、出て行かなければならなくなることもありうるのです。本当に不幸な話です。

こんな状況になることをAさんが望む訳はありません。むしろAさんはそんなことにならないようにわざわざ遺言を作ったはずです。では、このような悲劇にならないようにするためにはAさんは何をしておけばよかったのでしょうか?
最も確実なのは、

予め長男が先に死亡したときのことを想定した遺言を作成すること

具体的に遺言書にはこのように書きます。

自宅不動産については長男に相続させる。仮に長男が遺言者よりも先に死亡した場合は、長男の嫁に遺贈する

なお、遺言は何度でも書き換えることができます(意外とご存じない方が多いです)。
遺言を書き換えた場合は日付の新しい遺言が有効となりますので、長男が死亡した際にAさんが遺言を作りかえれば問題解決ともいえます。ただし、遺言を作るためには「意思能力」が必要ですので、Aさんがずっとお元気のままであれば問題なく遺言を作り替える事ができるのですが、認知症等で「意思能力」に問題がある場合には、作り替えた遺言が無効となってしまう場合がありますので、やはり最も確実な方法を採るべきでしょう。

不測のトラブルを避けるために、さらに付け加えます。
Aさんには自宅のほかにこれといった財産はありませんが、老後生活資金として取り崩している預貯金が少なからずあるものです。Aさんが亡くなるときにこと預貯金を全部使い果たしていたら問題ないのですが、なかなくまいようにはいかないもので、相当額は残ったままでこれらは全額相続財産となります。

不幸があった場合に何よりもまず必要となるのが現金であることは皆さん異論がないことと思います。
相続人である子供たちに当座の資金を立て替えるだけの資力があればよいのですが、なかなか厳しいものもあろうかと思います(立替のため消費者金融に走る方もいらっしゃいました)。結局は亡くなった方自身の遺されたお金に頼ってしまうことが多いのではないでしょうか?

ここで問題となるのは銀行や郵便局からの出金手続きです。
たとえ1円だけでも死亡者名義の口座からお金を引き出すとなると、戸籍謄本類をはじめ、相続人全員の実印と印鑑証明を要求されます(既にご経験された方も多いのではないでしょうか?)。もしかしたらお金を引き出すことだけでトラブルに発展することもあるかも知れません。
こんな場合には

「遺言執行者」として弁護士や司法書士などの専門家を指定することが確実です。

「遺言執行者」とは、
遺言書に書かれた内容を実現するための事務手続きを遺言者に代わる行う者のことです。
遺言執行者は上記のような専門家だけではなく、相続人がなることもできますし、全く関係ない第三者がなることもできますが、金融機関からお金を引き出すことに関して言えば、専門家以外の者が遺言執行者となっている場合には、たとえ遺言であっても相続人全員の印鑑等を要求されることがあります(全ての金融機関に当てはまることではありませんが、現にこのようなご相談がありました)。これは、後々のトラブルの責任を金融機関が負わないようにするための金融機関内部の事情によるものと考えられます。(遺言執行者が専門家の場合のみ認めるのは、いざというときの責任の所在を当該専門家に転嫁できるから?)。

まとめとして。。。Aさんが作成しておくべき遺言とは、少なくとも・・・

一、遺言者の所有する自宅不動産については長男に相続させる。
仮に長男が遺言者よりも先に死亡した場合には、長男の嫁に遺贈する。

一、遺言者名義の現金預貯金については・・・(思いどおりの分け方でOKです)。

一、この遺言の遺言執行者として司法書士○○○○を指定する。

という内容が考えられます。
「将来のトラブルを案じて・・・」「自分が築いた財産なので自分の思い通りに分けたい・・・」
遺言を作る際には皆さんいろんな想いでいらっしゃることでしょう。
このような想いでせっかく作った遺言が何の役にも立たないとなると・・・お気持ちは計り知れません。

すでに遺言を作られた方は、これを機に今一度ご自分の遺言内容を見直してみてはいかがでしょう?
これから遺言を作られる方は、是非とも専門家に相談し、いろんな想いを語ってください。
家庭内の事情などは言いにくいものですが、せっかく遺言を作ったのに、
今回の長男の奥さんのような不幸な方が出てくることも大いにあり得るのです。
いくら専門家でも遺言者の想いがわからなければ本当に必要な遺言をアドバイスすることはできません。
我々専門家には守秘義務があります。
少しでもわからないことがあれば、
「うちの場合はどうなの?」と、お気軽にご相談ください。