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成年後見制度

病気や心身障がいで、法的責任が取れない方を後見する制度、ご存知でしたか?

暑い夏も過ぎ、すっかりと秋らしくなってきた10月にお墓参りに行ってきました。お墓の前で手を合わせると本当にすっきりとした気分になります。「先祖さんのおかげで今の私もあるのかなあ」という感謝の念がいつも湧いてきます。相続などの仕事をするたびに、人間の死というものには、いろんな意味があるのだなあと思わずにいられません。相続によって家が大紛争になったり、逆に家族の絆が深まったり、本当に相続は、その方の「死」が何かを家族に投げかけているのだと思わざるえません。

さて、今回は「成年後見」をテーマに私の体験談を書きたいと思います。 私とも親交のあった山田浩一さん(仮称)が78歳でお亡くなりになりまし た。遺族は、文子さん(75歳)と信雄さん(45歳)のお二人でした。文 子さんからお電話をいただき、「実は、夫の財産について遺産分割をし たいのですが、 実は・・・息子(信雄さん)には知的障がいがありまして・・・、 勝手に息子の分の印鑑を書類に押すわけにもいかないし、どうしたらいいで しょうか?」という相談でした。 私は、「それでしたら、成年後見人をつけたらどうでしょうか?」と提案しま した。「後見人って聞いたことはあるんですけど、具体的にはどんな制度なん ですか?」ということでしたので、詳しく説明させていただくことにしまし た。

成年後見制度を簡単に説明しますと、認知症・知的障がい・精神 障がいなどの理由で判断能力の不十分な方々にとっては、不動産や預貯金な どの財産を管理したり、生活支援サービスを受けたり、相続で遺産分割協議 をする必要に迫られたりしても、自分でこういったことをすることが難しい 場合があります。又、自分にとって不利益な契約であったとしても、よく判 断ができないままに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害にあう可能性もあ ります。こうした判断能力が不十分な方々を保護し、支援しようというのが 成年後見制度です。

「そんな制度があるんですね。先生、息子に成年後見人をつけ て、この遺産分割の手続を進めたいんですけど」という要望がありましたの で、成年後見人選任の申立を行うこととなりました。成年後見人の候補者を 誰にするかを文子さんと相談し、文子さんの姪である佐藤多香子さん(52 歳)でどうかということになりました。 多香子さんは、信雄さんの世話を昔からよくしてくれて、信雄さんも多香子 さんをとても慕っていました。又多香子さんは金銭面などもしっかりしてお り人間的にも信頼のおける人でした。早速多香子さんに連絡をとり、信雄さ んの成年後見人になって欲しい旨を要請しました。初めは「そんな重大な役 割を私ができるかしら・・」と不安そうでしたが、いろいろと説明していく うちに、「信雄さんのために、お役に立てるなら・・」と成年後見人になるこ とを承諾してくれました。

ただ、多香子さんが「成年後見人になります」と言っただけでは 成年後見人にはなれません。
家庭裁判所が、精神上の障がいによって、判断能力を欠く常況にある者につ いて本人のために成年後見人を選任してはじめて、成年後見人は,本人の財 産に関するすべての法律行為を本人に代わって行うことができるようになり ます。ですから、まずは「多香子さんを成年後見人にしてください」という 申立をして、家庭裁判所がそれを認めないといけないのです。 家庭裁判所の家事審判官(裁判官)が、提出された書類や家庭裁判所調査官が 行った調査の結果等を種々の資料に基づいて多香子さんを成年後見人に選任 してよいか否かを判断し決定します。

この手続には、戸籍謄本をはじめ、収入明細や支出明細、その他療 育手帳など数多くの書類が必要とされます。私は、文子さんや信雄さんそし て多香子さんに関するいろいろな書類を集めました。2週間ほどかけて成年 後見申立に必要な書類を全て揃え、書類も書き上げ、大阪家庭裁判所に提出 しました。数日後家庭裁判所から「今度指定期日に文子さん、信雄さん、多 香子さんの3人の方と一緒に裁判所に来てください。面接をしますので。」と 呼出がありました。当日、2時間ほどかけて家庭裁判所調査官と申立の経緯 や信雄さんの生い立ちや家での状況、多香子さんの家族のことや文雄さんと の今までの関わりなどの面接が行われました。 それから約一ヶ月後、「佐藤多香子を山田信雄の成年後見人に指定する」旨の 審判が正式にありました。

成年後見制度

それから一ヶ月後、故人の山田浩一さんの遺産分割協議を行いま した。不動産や現金預貯金について協議を行い、きっちりと財産の配分を取 り決めました。書類の末尾には、文子さんの印鑑と成年後見人である「佐藤 多香子」の印鑑(実印)が文雄さんに代わって押印されました。 これによって、不動産を初め、現金預貯金の名義を亡くなった浩一さんから 文子さんそして信雄さん名義に無事に切り替えることができました。 手続を終えて、多香子さんとお話しする機会がありました。「先生、成年後見 人にとして1つ大きな仕事が終わってほっとしています。でもこれで終わり ではないので、今後も文雄さんの成年後見人としてしっかりとやっていきま す」と力強く話してくれました。