- 吉本法務事務所TOP>
- 当事務所について - 事務所レターつなぎ>
- 遺言及び生前契約
遺言及び生前契約
病気や心身障がいで、法的責任が取れない方を後見する制度、ご存知でしたか?
お盆明けの暑い日、梅田初子さん(仮名:82歳)から「遺言のことでちょっと相談にのって欲しい」とお電話をいただきました。初子さんは、10年前に御主人を亡くされており、又お二人の息子さんは仕事の関係で地方に行っておられ、現在は女1人で住んでおられます。初子さんからの相談内容は、「最近テレビで『遺言を書いておきましょう』というのを見るのですが、いざ自分が書こうと思ってもどうやって書いて良いのかが全然わからないのです。先生、教えてください」という御相談でした。こうした悩みは、私の周りでは日常茶飯事です。本人が「遺言を書こう」と思っても、誰に頼んで、そしてどのような手続をすればよいのかがそもそもわからない。下手に市民相談などに行っても専門用語ばかりを並べられて、余計にわからなくなってしまいます。それに、遺言を書くのにお金がいくらかかるのかも全然わからず、結局は「もういいや!」と遺言を書くことをやめてしまうケースも多いようです。
初子さんの財産は、お住まいの家、外貨預金、預貯金などでした。それらを1つ1つお聞きして、『自分が亡き後その財産をどうしたいのか』を考えて頂きました。「あせらなくてもいいので、ゆっくりと自分自身の気持ちに正直になって考えてみてください」とお伝えしてその日は帰ることにしました。数日後、初子さんからお電話をいただき、再び訪ねることとなりました。「今住んでいる家は、できれば長男に渡したい。外貨預金については長男の嫁がよく面倒を見てくれたので彼女に渡したい。銀行の預金は、息子2人に半分づつしてもらいたい」という初子さんのお話しをききながら遺言書原案を書くことにしました。財産以外にも、祭祀承継のこと、お墓参りには欠かさず来て欲しいこと、家族仲良く梅田家を守って欲しいことなどを盛り込んでいきました。それから初子さんと何度か打合せをして、ようやく遺言書の原案が出来上がりました。「これで、遺言ができあがりですね!」と初子さんは喜んでおられましたが、まだできあがりではありません。公証役場でこの原案を「公正証書」というものにしてもらって、初めて「公正証書遺言」というものの完成になります。なんだか難しく思えますが、原案さえできれば、その他の面倒な書類集め作業、公証人との打合せ作業などは全て司法書士などが行いますので、ほぼ90%はできあがったようなものです。
原案が出来てから、3日後に公証役場での押印もでき、初子さんの公正証書遺言も無事に完成しました。「こんなにカンタンにできるのですね」と喜んでいただけました。
公証役場からの帰り道に、初子さんは「先生。実は、生きている間に、葬儀の契約もしておきたいと思っているんです」というお話しをされました。葬儀は、亡くなった直後に悲しみの中で慌ただしく行われます。結婚式などの場合には、事前に時間をかけて見積もりをとったりして「高い」とか「安い」とか冷静に判断できるのですが、葬儀の場合には、おおよそ正常な判断ができない中で3日ほどで全てを終えてしまうので、あれよあれよという間に冷静に考える間もなく終わってしまいます。祭壇、お花などをはじめとして、後からすごい値段の請求書が来てびっくりするケースもありますし、葬儀のために消費者金融から借金するという笑えないような現実もあります。こうした問題がテレビなどでクローズアップされて、話題をよんだこともあったようです。ですから自分の可愛い娘さんや息子さんなどが、あたふたせずに、又お金の心配もせずに葬儀をできるというものです。思い立ったらすぐ行動をする初子さんは、早速に、葬儀社との間で葬儀の「生前契約」を結ぶことになり、「自分が亡くなった後にどういった葬儀をしたいのか」を基にプランが作られていきました。花や棺、その他これから亡くなるであろう人が決めていくのはなんとなく変な感じもしましたが・・。私自身こうした契約に立ち会うのは初めてでしたので興味津々でしたが、これからは、遺言をはじめとして、生きているうちに全て決めておくのが普通になっていくのだろうかと感じずにはいれませんでした。
「先生! 遺言も書けましたし、葬儀の契約も終わりましたし、私ができることは全部やりました。私は何歳まで生きれるかわかりませんけど、旅行へ行ったり、美味しいものをたくさん食べたりして、楽しく過ごします。ボーイフレンドでもできたら最高なんですけどね!」と明るくおっしゃる初子さんを見て、なんだか胸の中がぽかぽかと熱くなりました。
今回は、
かつて私がお葬儀の生前予約にたずさわった事例を
ご紹介させていただきました。
「元気なうちに自分の葬儀の予約をしておく」方が
徐々にですが増えてきているようです。
また最近では、お医者さんから「あなたの余命はあと6ヶ月」
などと宣告されるケースも珍しくなくなり、
「自分自身が生きている間に、自分のできることは自分でしておく」
という方が非常に増えています。
自分のお葬儀に自分自身は参加できませんが(笑)、
それでも自分自身で『最期の場』を作っておくことはできるのですね。